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Janek Chenowski's Provisional Blog

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終末? いいえ、週末を楽しむ為の。

 「EDC」という言葉がある。
 「エブリィ・デイ・キャリー」の頭文字を取ったもので、アメリカという島の主に北半分で「毎日持ち歩くモノ」を指す言葉らしい。ほう、日用品のことね――と思うなかれ。試しに「EDC kit」などの言葉をGoogleで検索してみると良い。ヘビーデューティーなカラビナに纏められた鍵束に始まって、小型のフォールダー・ナイフ、マルチツールにフラッシュライト、果ては小型の拳銃などを誇らしげに並べた写真が必ず見つかる筈だ。加えて、それらを収納するケースはほとんどの場合、軍用規格のナイロンで出来た暗緑色のポーチである。
 注意深く見ると、それらのEDCキットには「サバイバルの道具」が揃っている事が分かるだろう。つまりEDCとは単なる所持品を指すだけではなく、いざ何らかの災害やカタストロフが到来した時に生き延びる為、常に持ち歩いている道具類をも表しているのである。拳銃が何のために必要なのかは分からないが、アメリカでは定期的にゾンビ・クライシスが発生するという噂なので、蘇った死者の脳を破壊する為には必携のアイテムなのかもしれない。ジョージ・ロメロの映画の世界が実現する日は遠くないと、彼らは信じている。
 幸い、私達が暮らす日本ではゾンビは発生しないので、拳銃を持ち歩く必要はない。しかし地震などの自然災害の猛威は激しく、2011年に東北に壊滅的被害をもたらした大震災などはまだ記憶に新しい。災害による一次的な被害を受けた者だけでなく、遠く離れた首都圏でさえも壊滅した交通網や停電に苦しめられた人間は多かった。それからしばらく、懐中電灯やビクトリノックスなどを常に携帯していた人はたくさん居たのではないかと思うけど、それらはEDCの概念と非常によく似ている。
 とはいえ、アメリカ人の考えるEDCと我々のEDCは異なる。フロンティア精神が遺伝子レベルで刻み込まれたアメリカ人は「戦って生き残る」為に攻撃的なアイテムを多数忍ばせる傾向にあるが、日本でそんなモノを持ち歩いていたら単なる危険人物である。もしも貴方が突如襲い来る暴漢をスタンガンで華麗に撃退したり、或いは地下鉄で牙を剥いたテロリストの喉を切り裂く英雄願望に憑りつかれているのなら、断言しよう、その前に警察官に職務質問されて大切な物を失くす事になる。もしも職質を受けなくても、確実に友人は失うだろうと思う。日本に於いて、日常生活でナイフが必要になる場面など、せいぜい衣服の値札を結ぶ樹脂製のタイを切り離す時くらいのものだから、好んで持ち歩くことはない。我々の社会には素手で開けられない菓子袋や牛乳パックはほぼ存在しないし、開封する度に指を切断しそうになるようなブリスターパックも無いのだから。スタンガンなどの類に至っては何をかいわんや、だ。
 アメリカ人の持つEDCキットの内容が人によって違うように、我々日本人は我々なりのEDCキットを考える必要がある。例えば、モバイルバッテリーなど良いかもしれない。僕らは携帯電話やパソコン無しには1時間と生きられない民族なんだから。それと数えきれない程のポイントカードや証明書の類。
 先日僕が手に入れた『Duty Accessories Bag』は、そうしたEDCなグッズをまとめて放り込むには最適なバッグかもしれない。製造しているのはFLYYYYYYYYYYYYYYYEという中国のメーカーで、米国の軍用装備のコピー品を作っている事で知られている。まぁ、品質そのものは決して悪くない。下手するとロンドン・ブリッジ・トレーディングあたりのギアの方が、作りが雑に見える事もある。もしかしたらこの『Duty Accessories Bag』も原型となる他社製品があるのかもしれないが、少なくとも僕は見た事がない。
 外観は小型のポシェットといった趣のショルダーバッグで、A5のノートがギリギリ収まる程度のサイズだ。表側と裏側にはパイルアンドフックで開閉するポケットが一つずつ付いていて、表側にはワッペンを取り付ける為の小さなパイル地が縫い付けられている。マチは5センチ程度だろうか。あまりゴテゴテの荷物を詰め込む設計ではないらしい。手提げとして使う為のベルトは鞄の三辺を囲むように取り付けられていて、その三辺のどの部分でも手を通せるようになっている。大した意味はないけど、慌てていたり、うっかりしてバッグの頭ではなく横っ腹を掴んでしまった場合でも、しっかりとホールドする事が出来る。
 ジッパーは二つ付いていて、全開にするとポーチは大きくその口を開ける。意図的にそう設計したのか、或いは偶然か、このバッグはジッパーを目一杯開けても90度以上にガバッと開く事がない。内容物がこぼれ落ちる事がないのは安心だ。何かの拍子にグレーチングの隙間から、排水溝に向けて小銭をバラ撒いて、鼠を驚かせる事がない。
 中は多数のポケットと仕切りで構成されている。EDCの細々したモノを整理して入れておくには大変便利だけど、エラスティックバンドなどが一切ないので、内容物をしっかりと固定する事は出来ない。もしも失くしたくない物がある場合、貴重品などを繋ぐためのランヤードがあるから、そこに接続する事で万が一の落下防止に役立てる事が出来る。一本だけしかないけど。
 さて、このバッグに僕のEDCグッズを入れてみよう。まず4色のボールペンが一本、ノート一冊、それに携帯電話のモバイルバッテリーと充電用ケーブル。車と部屋の鍵にフラッシュライトをまとめたキーホルダーはランヤードに繋げておく。免許証やPASMOが入ったケース。「レザーマン」のウェーブが一つ。これでジッパーを閉めても、まだまだ容量的には余裕がある。外側のポケットには煙草とライターに携帯灰皿、そして携帯電話を入れる。メッシュポケットなので中身が丸見えだけど、僕としては気にならないので構わない。流石に財布や剥き出しの貴重品を入れる訳にはいかないけれど、そうしたものは反対側のポケットに入れれば良い。そちらはしっかりとしたナイロン製のポケットだし、目立たないように配置されている。
 とりあえず、僕のEDCキットはしっかりと全部収まっている。あとは出かける時にこのバッグを引っ掴めば必要な物は全部揃っているし、もしも他に大きな荷物(A4サイズの書類とか)を運ぶ必要があっても、別の鞄と併用する事が出来る。ショルダーバッグなので、リュックサックと一緒に使う事だって可能だ。
 これと言って欠点の見当たらないバッグだけれど、強いて言うなら拡張性が無いのは残念。どちらかといえばタウンユースのバッグだから、全面にMOLLEのウェビングが施されたいかにもなデザインも考え物だけれど、中のコンパートメントをパイルアンドフックで脱着できるようにして、自由にレイアウトできる等のアイディアは欲しかったかもしれない。
 軍用装備(のパチモノ)を生産するメーカーのバッグ、という事で夢想に浸りそうになるものの、どちらかと言えばこれは戦ったり、生き残ったりする為の道具ではなく、あくまで日常生活をより便利にする為のバッグとして扱うべきだろう。我々が毎朝、サイドテーブルの上から小銭や鍵束をいちいち取り上げてズボンに仕舞う手間を省かせてくれる、いわばセカンドバッグとして。
 セカンドバッグと異なるのは、「もしも」の時に役に立ってくれそうな、そんな信頼を寄せる事が出来るという点だ。
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