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Janek Chenowski's Provisional Blog

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違うんだラリー、それは僕じゃない。自宅警備隊だ。

 先日、大洗を訪れてきた。『ガールズ & パンツァー』の町である。
 オタクは慎ましく生きるものと決めている僕の場合、普段はこうした「聖地巡礼」と呼ばれる行為にちょっとした拒否感を示してしまうのだけれど、大洗に限って言えば「町中がウェルカムモード」という噂を聞いていたので、実際はどうなのだろうかという興味はあった。
 アニメやマンガの舞台となった為に「聖地」とされ、地域振興の一助になったという例は過去にもある。しかし、巡礼者と地元住民とのトラブルがあったという話も枚挙に暇がない。よくよく冷静に考えてみると、お洒落とは程遠い格好に怪しげな鞄、巨大な一眼レフカメラを首から提げた中年男性が静かな観光地を往く光景というのは、そう気持ちの良いものではない。きっと「聖地」に住む地元民は、それを苦々しく思いながらも、地域振興の為に黙って堪えているのだろう――と、そんな事を考えた事もある。
 だが、僕が大洗サンビーチ駐車場に車を停め、ダサいポロシャツとショルダーバッグに一眼レフカメラを提げた中年男性という格好で大洗町に降り立った時、自分の想像がどれだけ浅はかだったかを思い知らされる事になった。至る所に林立する「大洗女子学園優勝おめでとう」の幟旗、店先に置かれた『ガールズ & パンツァー』の登場人物の等身大ポップ、そして作品に対するリスペクトが溢れて滴り落ちる程のオリジナル商品の数々――そう、町中が大真面目に聖地を演出していたのである。
 大洗を巡るあいだ、僕が何度「大洗女子学園」が実在するかもしれないと考えそうになったか知れない。あの可愛らしいキャラクターの面々が今にも道路の反対側を通り過ぎるのではないか、と思ったのも一度ではない。そして、そんな白昼夢に耽る僕の思考を現実に引き戻すような要素が、大洗には存在しなかった。まるでツッコミ役が存在しないコントの様だ。『モンティ・パイソンズ・フライング・サーカス』のスケッチのように、どこまでも加速していく悪ふざけの応酬。しかも誰もが楽しんでいる。
 「悪ふざけ」というのは決して悪い意味ではないけれど、大洗町に遊び心が溢れているのは否定しようもない事実だった。町中がイースターのようだ。まるで子供が色を塗った卵をいくつ探し出せるかを競うように、いい大人が町の各所に隠された『ガールズ & パンツァー』の要素を探して彷徨うのだ。なんだか本当に子供に戻ったみたいだった。

 ところで話は変わるんだけれど、『自宅警備隊完全読本』という本が届いた。00年代の終わり頃からネットでしばしば話題にされていた「自宅警備隊N.E.E.T.」という集団を特集したものである。僕自身はこの集団とは特に接点もないし、このムックを買う予定など全く無かったのだけれど、ある日突然Twitterで寄せられたリプライが購入を決意させたのである。
 「TF麻子パッチが欲し過ぎて自分で作成したところ、勢い余って本に写っちゃいました」というような内容だった。知らない相手からだった。



▲右上がヤネク・チェノウスキ作成のTF麻子パッチ(試作)


 「TF麻子パッチ」とは以前僕が作成したコラージュ画像で、EAの『Medal of Honor: Warfighter』に登場するTF Makoと『ガールズ & パンツァー』に登場する冷泉麻子をもじったギャグである。これをパッチ(ワッペン)にした物は限られた人間にしか持たせて居ない。おそらくこの図案を気に入った誰かさんが、僕がTwitterにアップしていた画像を元にこっそり自作していたものが、何を誤ったか『自宅警備隊完全読本』に載ってしまったらしいのだ。
 元画像に関して僕は特に権利を主張するつもりもないし、そもそも版権的に何を主張できるわけも無いのだけれど、この手のエピック・フェイリュアは大好きなので、僕は『自宅警備隊完全読本』を買う事にした。未来への警鐘の意味でも必要だ。この本は後世に残す価値がある。何かの拍子に、僕の作ったちょっとしたコラ画像が形にされて、書籍に乗っかってしまう事があるという教訓を示すものとして。
 ここで「スペシャルサンクスに俺の名前くらい載せろ!」と騒ぐ人種も世の中には居るかもしれないけれど、僕の関与を示す証拠が一切無いのは幸いとしか言いようが無い。自宅警備隊の自作という事にしても構わない。むしろ感謝しなければならないかもしれない。
 実は最初に書いた大洗巡礼の際、例のTF麻子パッチを某所に寄贈しているのである。
 権利的には限りなくグレーな代物だったから、万が一ラリー・プロブストが大洗に行こうと思い立って、TF麻子パッチを目にする事でもあったら、彼はきっと愉快にはならないだろう。そして彼は僕という存在を突き止め、こう告げるだろう。「ヤネク、お前がTF麻子パッチ作ったのか?」
 だけど、僕はこう答える事が出来る。「違います、サー。自宅警備隊です。ほら、ここに載ってるでしょう?」
 それだけでも、この『自宅警備隊完全読本』は買う価値がある。
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